COLUMN

うまくいく夫婦と、そうでない夫婦の違い

「相性が良ければ続く」と言われがちですが、研究が指しているのはもう少し具体的なことです。何を分けたかよりも、どうやりとりしているか。そして実際の分担量よりも、不公平だと感じているかどうか。ここでは出典つきで紹介します。

ツリアイの前提はひとつです。「長く続く関係」を目指すなら、効くのは公平感である。 何が正しい分担かは決めません。決めるのは2人ですが、2人の「公平の測り方」が違うと、どちらも公平のつもりのまますれ違います。 その測り方を見えるようにするのが、この診断の役目です。

1. 別れる夫婦は「話し方」でわかる

心理学者ジョン・ゴットマンは、夫婦の会話を観察して、のちに別れる夫婦を高い精度で言い当てられると報告しました。鍵になるのは4つの振る舞いです。

批判

「またやってない」— 出来事ではなく相手の人格を責める

侮辱

ばかにする・あきれる。いちばん強い予測因子とされる

防衛

「自分は悪くない」と言い返す。話が前に進まない

だんまり

黙って会話から降りる。相手には拒絶に映る

さらに、日常の小さな働きかけ(「ねえ、これ見て」)に応じるかどうかも効きます。続いた夫婦は86%応じていたのに対し、別れた夫婦は33%でした。

※ 「94%の精度で離婚を予測」という数字は有名ですが、これは既に結果が出ている夫婦に当てはめた分析で、方法論への批判もあります。ここでは「4つの振る舞いと、応じ方の差が大きい」という部分を採ります。

出典: The Gottman Institute Research FAQBids for Connection(Gottman)

2. 「もらいすぎ」も不満になる

人間関係の釣り合いを説明する公平理論(equity theory)では、釣り合っている関係がいちばん安定するとされます。 大事なのは、与えすぎている側だけでなく、もらいすぎている側も満足度が下がることです。もらう側には気まずさや罪悪感が残るからです。

「してもらってばかりで居心地が悪い」という感覚は、わがままではなく、釣り合いが崩れているサインとして扱えます。

出典: Hatfield & Rapson “Equity Theory in Close Relationships”(PDF)

3. 家事の量より、「不公平だと感じているか」

共働き夫婦を対象にした研究(Frisco & Williams 2003)では、家事分担を不公平だと感じていることが夫・妻の両方の結婚満足度を下げ、さらに妻では離婚の確率を高めていました。 興味深いのは、その関係が「満足度の低下」だけでは説明しきれなかった点です。実際に何時間やっているかより、不公平だと感じているかどうかが効いていました。

つまり、時間を測って半分にすれば解決するとは限りません。2人が同じ物差しで「釣り合っている」と言えるかが問われています。

出典: Frisco & Williams (2003) Journal of Family Issues 24(1)

4. 日本では、妻の不公平感が特に高い

日本の調査でも、妻の側の不公平感の高さと、夫の家事・育児分担率の低さが、夫婦関係の満足度を押し下げる要因として繰り返し指摘されています。 内閣府の調査は「家事の実態が互いに共有されず、貢献を適切に評価できていないと不公平感が高まる」と整理しています。

ここでも問題は量そのものではなく、見えていないこと・数え方がずれていることです。 献立を考える、在庫を把握する、予定を覚えておく——時間に出ない負担ほど、相手からは見えません。

出典: 内閣府 家事等と仕事のバランスに関する調査(PDF)NFRJ 夫婦の勢力関係および夫婦関係満足度(PDF)慶應 JPSC 夫婦関係満足度とWLB(PDF)

5. なぜ「持つもの」と「分担」の交換で見るのか、測り方はなぜ5つか

公平理論は、関係を「自分が持ち込むもの(inputs)」と「得るもの(outcomes)」の釣り合いで説明します(Walster ほか 1973、Hatfield & Rapson)。 結婚に持ち込むものは大きく2種類です。持つもの(容姿・年齢や人柄のように、選ばれる時点で「相手に求め、自分が差し出す」もの)と、分担(家のこと・お金・働く時間・自由時間のように、結婚後にし続けるもの)。ツリアイはこの2つの収支を別々に見て、合計が釣り合っているかを判定します。 「容姿は高く求める代わりに家のことは自分が担う」のような領域をまたいだ交換も、合計が合っていれば筋の通った公平感として扱います。

そして、何をもって「釣り合っている」とするかは人によって違います。社会心理学者ドイッチュは、分配の公正には衡平(貢献に比例)・平等(同じだけ)・必要(必要な人に)の3原則があり、どれを使うかは関係の目的や場面で変わると示しました(Deutsch 1975)。 ツリアイの5つの測り方はこれを夫婦の言葉に置き換えたものです。

成果で測る = 衡平

稼いだ額や仕上がり、つまり「貢献の大きさ」に比例して釣り合いを見る

かけた時間で測る = 平等(投入)

同じ時間をかけたなら同じ。投入の量をそろえる

しんどさで測る = 必要

苦手な人の1時間は重い。本人の負担感・体力という「必要」に合わせる

まとまった自由時間で測る = 平等(結果)

全部終わったあとに残るものをそろえる。投入ではなく結果の平等

柔軟(場面ごと)

ドイッチュが示したとおり、場面で原則を切り替える人。話し合いで決める

※ 診断では測り方を1問では決めず、「公平だと感じるとき」「もめたとき」「忙しいと言われたとき」の3つの場面で聞いた答えの多数決で判定します。 「結婚して人生が良くなったから公平」という感謝は測り方に含めません(育った環境は本人の努力と無関係で、不遇だった人が不利になるため)。

出典: Walster, Berscheid & Walster (1973) New Directions in Equity ResearchHatfield & Rapson “Equity Theory in Close Relationships”(PDF)Deutsch (1975) Equity, Equality, and Need

ツリアイが、この研究をどう使っているか

前提は「長く続く関係」

何が正しい分担かは決めません。長く続くことを目標に置いたとき、効くのが公平感だから、それを測ります。

実際の量ではなく「公平感」を見る

分担の割合を聞いたうえで、判定に使うのは「あなたの物差しで釣り合っているか」。研究が示すとおり、効くのは量そのものではなく感じ方だからです。

もらいすぎも、与えすぎも指摘する

受け取りすぎだけを問題にしません。差し出しすぎも同じ強さで指摘します(公平理論)。

見えない負担を数える

「段取り(名もなき家事)」を独立して聞き、時間に出ない負担として数えます。

人生トータルで見る

山(子が小さい時期)を担った側に、谷で返す設計かどうかを見ます。いまの分担だけで判定しません。

なお、この診断は相性を判定しません。見るのはあなた1人の中の筋の通り方です。相手と受けて見せ合うと、物差しの違いがそのまま見えます。

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出典